最悪な失業者数が出る度に、メディアは競って≪もう数年も失業中で、その上失業保険も尽きてしまい、住宅ロ―ンも払えず、子供を含め家族全員が親の実家に世話になり、食べる物にも事欠いて……≫と言う様なスペイン人家庭を訪問インタビューする。
確かに、ここにこそ今スペインが抱えている重大な社会問題が折り重なって一家族の上にのしかかっているのが良く分かる。そして、残念ながら、この厳しい状態はここでも、そこでも、あそこでも見られる光景なのだ。
だが……
ここで50代半ばの知人の話を書くことにする。
彼は3年前から失業中だ。溶接の仕事に携わって来た彼は、会社の倒産により仕事を失った。彼の2人の子供はもう既に成人、結婚し、今はパ-トタイムで働く奥さんと2人で暮らしている。
奥さんは朝からお昼まで仕事に出て、700ユ-ロほどの稼ぎがあり、夕方は自宅でおこずかいを稼いでいる。
彼は今のところ月に1100ユ-ロの失業保険を(いつまで貰えるかは知らないが)貰って暮らしている。
彼の生活はと言うと、
朝からヨットハーバーに置いてある中古の小型船を丁寧に修理しにいく。彼は船が大好きで、リストラになってから購入したその中古の船に情熱を注いでいるのだ。月に何回かは友人達と週末でもないのに昼から≪男の料理≫的な集まりに参加したりして、結構楽しくやっている。
おそらく失業してなかったら、彼は新しい小型船を買っていただろう。ヨットハーバーに行く時は、ポケットに20ユ-ロではなく200ユ-ロが入っていることだろう。大好きなレアルマドリッドの会員も続けているだろう。以前の様にお手伝いさんに掃除をして貰っていることだろう。
確かに数こそ少ないが、 実はこの家庭もまた、スペイン失業者のもう一つの顔なのだ。リストラになったものの、最低限の収入を何らかの方法で確保でき、その上既に住宅ロ―ンも済んでいて、養わなくてはいけない子供ももう自立し、今まで贅沢と思われてきたことを我慢さえすればそれなりの生活が出来る。(それでも小型船の件は私には贅沢に見えるが……)
と言うわけで、失業保険が終わってしまうか、或いは娘家族が失業の為住宅ロ―ンが払えず彼の家にお世話になることになり、おまけに孫2人もやって来て、経済的に援助しなくてはならない状態が発生しなければ、彼のリストラ生活は今のところ
≪de put@ madre≫
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